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日本のマクロ金融

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(単位・億円) 日本の通貨量(正確にはマネーストックのM1、現金と国内銀行等にある口座残高の総量で、政府や金融機関の保有は除く)は、2009年に約500兆円だったものが、2018年には約750兆円になるなど、10年でおよそ5割の増加がみられる。 (日銀統計ページ) 日本には、10年前より5割も多く現預金が存在するのだ。 しかしその分物価や給料が上がったと感じる人はなかなかいないだろう。なぜだろうか? 物価が上がらないのは取引が現預金の量と関係が薄いのではないか? 支払いを考えるとき、クレジットなどの方が多い。例えば翌月の引き落とし、という取引をする場合には統計からみえなくなる。 クレジット協会によれば、2017年末時点で、1000兆円を超えるクレジット残高が存在する。 しかしよく見るとこれも急激な伸びを示しており、統計と実感の差異を説明出来ていない。 お金はいったいどこにいったのだろうか? 答えとなるのは日本銀行の資金循環統計だ。ここから表を抜粋する。 これによれば、家計の現預金は2009年からの10年間でちょうど200兆円ほど増えているのであり、日本銀行の流通量調節による景気刺激への努力は、おそらく家計を担う人々の将来不安から無効化され、現預金に流れていたのだ。有効だったら企業の現預金にも増加があるはずだが、増えていない。 以上から、日本のマクロ金融は将来不安と資産運用不安により大きく資金流通施策が制限されており、お金が出回り、給与も上がるというような循環の実現には心理的な変化が必要である。また、家計の株式と信託には増加が見られるため、株式市場には流通するマネー総量の増加が見込めることが分かる。日本の株式市場に流れているのかどうか、これからどうなのか定かではないが、日本の株価が上がってきていることからは、今のところ馴染みのある銘柄が多い日本の株式市場にきているのだろうと思われる。

原油価格と原油関連企業の株価

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一つの種類の製品で事業を推進している企業について考える時、その製品の価格によって利益も株価も影響を受けるだろうと考えられる。例えば原油を安定的に調達している企業なら、売値が上がれば利益も上がり、売値が下がれば利益も下がるのではないかと推測される。これは当たっているのだろうか。 どれだけ影響を受けているのか、アメリカ合衆国のエネルギー省の サイト が提供する原油価格の推移と、日本の代表的な原油取扱い企業であるJXTGHD、昭和シェル石油の株価推移を2010年6月~2018年6月にかけて並べたグラフが下記である。 これをみると、まずJXTGHDについて、2014年までは連動がみられるのだが、そこから先にあまり連動が見受けられない。原油価格の低下をこなし、株価は安定的に伸びているように思われるのだ。 これはなぜだろうか。 一つはJXTGHDに固有の理由で、JXと東燃ゼネラルの合併が2017年に起きたことである。この合併による規模拡大・効率性拡大への期待から2016年には株価が上がり始めていると考えられる。 しかし2015年については、原油価格の低下によって株価が低下せず横ばいとなった理由が分からない。2015年3月期には、2014年3月期に黒字だった業績も赤字になっている。利益に連動するという株価の基本からすれば理解しがたい現象だ。 仮説として考えられることは、 ・PBRが関連する:資産は持っているので、株主資本価格近辺で時価総額がもみ合う ・配当が関連する:配当金額は下がっていなかったことで投資家が離れなかった ・業績予測が良い:2016年3月期も赤字だったが、IRが優れていたのかもしれない あたりだ。 次に昭和シェル石油について、2013年から株価が原油価格と乖離して上がっている。このあたりの時期にはメガソーラー事業への進出をニュースとして取り上げられているくらいだが、JXTGHDも行っていた。なぜこうなったのか、よく分からないままだ。 2015年に原油価格が下がると株価も下がってはいるが、これは微減にとどまっている。 2017年の原油価格上昇にともない株価は上がっているので、2015年以降だけみるとどうやら連動している。 以上から、2010年~2018年のデータをみると、 原油価格と原油取扱い企業の株価は緩やかに